2011/01/16

魔法の国モロッコ(5) なにかが起こる街、マラケシュ part4

魔法の国モロッコシリーズ


5日目


あまりにふさぎ込んでしまったので、元気になる方法を考えた。
どうしたら僕は元気になるだろうか?
答えは簡単。
太陽を浴びること。
僕は公園に向かい、ベンチで2時間程寝た。







ぼくはばかだ。
こんなことで。
ただ太陽を浴びて寝るだけで。
それだけでこんなにも元気になってしまうのか。


ぼくは完全に元気を取り戻した。
厳しい冬を乗り越え春を迎えたかのように。
考えること全てがポジティブになった。
自分でわかる。
歩き方までもが変わった。
道行く人に笑顔を振りまき、体全体で歩いた。
まるで恋が実ったかのように。
目に映るもの全てが活き活きとしている、あの感覚。


人間の精神とはこれほどまでに可変的なのか、と感心した。


元気になったぼくは、フナ市場へ繰り出し、大好きなオレンジジュースを飲んだ。


その場でオレンジをしぼってくれる。
4デュラハム(40円)
もしモロッコに来ることがあれば、全力でこのオレンジジュースを飲むことを勧める。
僕は1日2、3回飲んだ。
さて、オレンジジュースで充電された僕は屋台で夕飯を食べた。
力をつけるために肉を食べた。






なんの肉なのかよくわからないけど(たぶん羊と牛)とにかくうまかった。
手で肉を食べるなんて最高じゃないか。


この日から全てがうまく回り出す。
人生なんてこんなもんだろう。
ほんの些細なことから全てが悪い方向に進み、まるで人生のどん底にいるかのように、まるで自分が悲劇のヒロインでもあるかのように落ち込む。
でも、ほんの些細なことからその人生のどん底から抜け出し、春が訪れる。
そう、それはほんの些細なことなんだ。
幸せ、不幸なんて本当に紙一重だし、表裏一体。
くるくる回る赤ちゃんのおもちゃみたいなもんだ。


6日目、7日目はカフェに行って、学校の課題に取り組んだ。


ところで7日目は12月31日だった。


でもモロッコという国は、マラケシュという街は、そんなことはおかまいなしにただ毎日を繰り返す。
人間が作り出した年末というすばらしい概念なんか関係なく地球が毎日回るように。
そう、僕が何をしようと、地球は毎日ただ回って、マラケシュのフナ市場は観光客でにぎわい、屋台からいい匂いが漂って来る。
ひたすらオレンジは搾られ、お茶は注がれ続け、靴は売られ続け、観光客は客引きに勧誘され続ける。


皆平等に1年が与えられて、1年が終わって、また新しく違う1年が始まる。
そう思ってた。
でもそうじゃない。
時間はただ流れてる。
僕がいくら時間に意味づけしようとこの街では何の意味もなさない。
ただ時間が流れる。
ただ毎日が繰り返される。


それは本当に無機的で、少し悲しくもあった。
僕は本当に大きな流れの中にいて、なんとかその流れに意味づけをして、精神を保ってる。
じゃないと、その大きな流れはあまりに無機的で、僕は混乱してしまうだろうから。


そうして僕は2010年を終えた。
そして2011年の朝、僕はマラケシュを後にする。


でもそんなことは関係なく、マラケシュは毎日を生きていた。
きっと今もマラケシュは毎日を繰り返して、いろんな物語を作ってるんだろう。